スペイサイド地方のウイスキーを勉強していた時、
ひときわ強烈な印象を残した蒸留所がありました。
その名はモートラック。
「ダフタウンの野獣(The Beast of Dufftown)」という異名を持つ、
シングルモルトです。
エキスパート試験の勉強中、マッカランに代表されるスペイサイドモルトの特徴として、
「軽やかで華やか」という表現をよく目にしました。
確かに、多くのスペイサイドのウイスキーには、繊細なアロマや
優美な口当たりといった印象があります。
しかし、そんな中で出会ったのがモートラック。
解説に記されていた「肉厚で濃密」、「ミーティ」という言葉に
「ん?」と目を留め、さらにそのあとに続いた表現――“野獣”。
そのパワーワードが、一瞬で私の脳に焼き付きました。
同じスペイサイドにありながら、あまりにも異質なその個性。気になるに決まってるじゃないですか!
そんなモートラックのウイスキーを、先日あるお客様から
「テイスティング用に」と少量いただきました。
その瞬間から、私はこの一滴との対面を何よりの楽しみとなっています。
今はまだ、グラスに注ぐことはしていません。
デスクの横にそっと置き、毎日香りを嗅いでいます。
たった数滴の液体から立ち上るその香りに、心を奪われているのです。
いつ飲むのかまだ決めていません。
でも、その時が来たら必ず静かにゆっくりと向き合いたいと思っています。
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