食品の物理的刺激

僕は学生時代、“消化管のメカノバイオロジー”という学問分野の研究をしていた。


消化管とは、文字通り口腔から始まり喉や胃、腸などのこと。


メカノバイオロジーとは、身体の細胞が物理的な刺激に対してどのように応答しているかを研究する学問分野のこと。


物理的な刺激と言われてもあまりピンと来ないけど、ヒトは何かを食べるとき、味や香り(=化学的な要素)だけでなく、食感やのど越し(=物理的な要素)も同時に感じて、美味しい・美味しくないを判断しているというのは、何となく納得できると思う。


そこで、胃や腸でも同じように、食品やその消化物の粘性や流動性を細胞たちが感知して、そのはたらきを制御しているのではないか?という仮説を立てて色々と実験をしていた。




先日、兄に子供が生まれたので、姪っ子にひと目に会いに八王子まで行ってきた。


八王子に前乗りしてホテルの周辺で飲み歩いたのち、二日酔い防止のためコンビニでカップヌードル・カレー味を買って帰った。


部屋のポットで沸かしたお湯を入れて3分が経ち、いざ食べようと思った瞬間に割り箸がないことに気がついた。


これまでこの3分間にシビアに生きてきたが、仕方がないのでフロントまで箸をもらいにいって食べることにした。


なかなか人が見つからなくて、結局お湯を入れてから10分ほど経ってしまった。


フタを開けたら、案の定、麺がめちゃくちゃスープを吸っていて、まぜそばみたいな見た目になっている。


折角のカレーヌードルがもったいないなぁと思いながら食べてみたら・・・めちゃくちゃ美味いやないか!




そういえば、隣の席の山本さんがお昼にカップラーメンを食べていたとき、お湯を入れてから10分ほど丁寧に丁寧にかき混ぜていたことを思い出した。


山本さん曰く「え?ブヨンブヨンの方がうまいやん。」


その時は微笑んで聞き流していたが、そういうことかと納得させられてしまった。


改めて聞いてみると、”ブヨンブヨン”にした方が味がしみるだけじゃなく、スッと喉を通っていく感覚があるらしい。


まさにメカノバイオロジーを体感している人が隣に座っていた。


これからは、山本さんの話にももう少しだけ真剣に耳を傾けようと思う。
(嘘ですよ。ちゃんと聞いてますよ。)

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